分割キーボードおすすめ3選をHHKB目線で比較してみた
keyball39・roBa・moNa2という3つの分割キーボードキットを、HHKBを使ってきた立場から比較してみた。
どれもトラックボール内蔵の自作キーボードキットで、見た目は似ているけど中身はけっこう違う。
打鍵感やロープロファイル対応、ワイヤレス、耐久性、将来性まで、HHKB使いが乗り換えを検討するときに気になりそうなポイントをまとめてみた。
分割キーボードに着目したきっかけは、小型キーボードの酷使で巻き肩が限界に
HHKBは今でも素晴らしいキーボードだし、プログラマーなどのエンジニアリングには適していると思う。
おすすめは、US配列ではあるがMacbookのキーボードもUSにしないとミスタイピングが増えるので、結局JISからUSへ切り替えた経緯もある。

US配列に慣れてしまうと、日本のApple Storeでは整備済品にUS配列がないことや中古相場で全体的なパイが減ってしまうなどHHKB USモデルを使うことで隠れコスト増加が発生する。
しかしながら、HHBK USにより本職での生産性という意味でのアウトプットが増えたことは事実なので、総合的には費用対効果が高いと思っている。
ただ、この完璧なキーボードにも弱点があり、キーボードが小さいため肩が丸まってしまうんだ。
いわゆる巻き肩になってしまう。
20代であればそんなに気にしなかったのだが、30代半ばに近づくにつれて、巻き肩と猫背が生物として終わっているレベルで悪化してしまった。
さらにリモートワークによる運動不足も重なって、巻き肩をどうにかしたいと思い、分割キーボードに着目してみた。
本題の比較に入る前に:ロープロファイルとスイッチ、静電容量無接点をおさらいしておく

ここから先は「静電容量無接点方式」「スイッチ」「ロープロファイル」といった単語がわりと当たり前に出てくる。
自作キーボード界隈に馴染みがない人だと置いてけぼりになりそうなので、先に3つだけざっくりおさらいしておこうと思う。
静電容量無接点方式:HHKBが採用しているスコスコの正体
HHKBに採用されている入力方式で、物理的な接点同士がぶつからず、静電容量の変化でキー入力を検出する仕組みだ。
接点が擦れ合わないぶん摩耗しにくいと言われていて、あの独特な「スコスコ」とした沈み込みはこの方式ならではの感触になる。
今回比較するkeyball39・roBa・moNa2はこの方式ではなく、次に説明するメカニカルスイッチを使っている。
さらに物理的に接点がないため、故障率も低い。
現在使用しているHHKBも10年以上耐えられている。
現場のエンジニアと話しても、10年・20年の長期スパンでも現役で使えてるキーボードはやはり無接点方式となる。
スイッチ(メカニカルスイッチ):軸によって感触がまるで変わる
自作キーボードやメカニカルキーボードで一般的な入力方式で、キー1個ずつに物理的なスイッチが仕込まれている。
大きく分けるとリニア軸・タクタイル軸・クリック軸の3種類があって、リニアはスッと素直に沈むだけの感触、タクタイルは押し込む途中でコクッと引っかかりを感じる感触、クリックはカチッという音と感触がはっきり出るタイプだ。
このスイッチを好みのものに交換できるのが自作キーボードならではの楽しさでもある。
スイッチには「リニア」「タクタイル」「クリック」の軸タイプとは別に「カラーコード」という色の呼び方もある。
Cherry MX(や互換品のGateron・Kailhなど)が使う業界共通の表記で、代表的な4色の押下圧をまとめてみた。
| 軸の色 | タイプ | 感触 | 押下圧の目安 |
|---|---|---|---|
| 赤軸(Red) | リニア | スッと沈む、軽め | 45cN前後 |
| 黒軸(Black) | リニア | 赤軸より重め | 60cN前後 |
| 茶軸(Brown) | タクタイル | 押し込む途中で軽い山を感じる | 55cN前後 |
| 青軸(Blue) | クリック | カチカチ音と感触がはっきり出る | 60cN前後 |
静音赤軸・静音黒軸のようにサイレント系のリニア軸もある。
keyball39やroBaならまず軸タイプを決めて、そこからカラーコードで好みの重さ・音を選ぶとわかりやすいと思う。
ロープロファイル:キーの背が低い規格
キースイッチやキーキャップの高さを低く抑えた規格のことだ。
一般的なメカニカルスイッチの高さが18mm前後あるのに対して、ロープロファイルは11〜15mmくらいまで低くなっていて、キーストロークも浅めになる。
手首を反らす角度を抑えられるぶん、長時間タイピングしたときの負担が減りやすいと言われている。
レイヤー:少ないキー数を補う切り替えの仕組み
keyball39(39キー)・roBa(42キー)・moNa2(42キー)は、一般的なフルサイズキーボード(104キー前後)と比べるとキー数がかなり少ない。
そのぶん1つの物理キーに複数の役割を持たせていて、特定のキー(レイヤーキー)を押しながら別のキーを押すと、数字・記号・矢印キーなどに切り替わって入力できる「レイヤー」という考え方が前提になっている。
HHKBにもFnキーで数字を打つような似た仕組みはあるけど、自作の分割キーボードはレイヤーを2段・3段と積極的に使う設計が一般的で、QMKやZMKといったファームウェアでどのキーにどの役割を割り当てるか自由にカスタマイズできるのも自作ならではの楽しさだと思う。
最初のうちは「あれ、数字どこだっけ」となりがちだけど、慣れてくるとホームポジションを崩さずに数字や記号を打てるようになって、これはこれで手放せない感覚がある。
keyball39・roBa・moNa2ってどんなキーボードなのか
3機種とも自作キーボード界隈では有名どころだけど、それぞれ立ち位置がだいぶ違う。
まずはざっくり紹介しておこうと思う。
keyball39は分割トラックボールキーボードの元祖的な存在
keyball39はYowkees氏が設計した、左右分離型で親指側に34mmのトラックボールを内蔵したキーボードキットだ。
遊舎工房(委託販売)や白銀ラボなどで購入でき、価格は白が23,800円(税込)、黒が24,800円(税込)。
39キー構成で、標準キーはCherry MX互換のホットスワップソケット、親指キーはKailh Chocのロープロファイルスイッチに変更することもできる。
分割キーボード+トラックボールという組み合わせを広めた立役者的なモデルで、Keyball44・Keyball61など派生モデルも多い。
roBaは無線化に全振りした後発モデル
roBaはkuma氏(kumamuk)がkeyball系の形状を踏襲しつつ、基板・センサー・マイコン・ファームウェアを無線前提で作り直したモデルだ。
BOOTHで頒布されていて、仕様によって18,000〜21,000円(税込)ほど。
42キー構成でBluetooth(BLE)に対応、ファームウェアはZMKベース。
バッテリーは360mAh前後で、1日8時間使う想定で約3週間持つとされている。
標準はCherry MXソケット中心だけど、v3からは全キーをKailh Chocソケットに変更できるようになっていて、フルロープロ化もできる。
moNa2は完全ロープロ×完全ワイヤレスの新顔
moNa2はroBaやkeyballにインスパイアされて、pooh.polo氏とshakupan氏が作った小型分割キーボードだ。
BOOTH(shakupan)で頒布されていて、トラックボール・キーキャップ込みのフルセットが40,000円(税込)、トラックボール部品とキーキャップなしのバージョンが30,000円(税込)。
42キー構成で17mmという狭めのキーピッチ、25mmトラックボールを搭載していて、キースイッチはChoc v1/v2やlofree系のロープロファイル専用。
XIAO BLEとリチウムイオンバッテリーで完全ワイヤレス動作し、ファームウェアはroBaと同じくZMK。
「ロープロファイルかつ完全無線の分割キーボード」自体がかなり珍しく、そのニッチな条件をピンポイントで満たしているのがmoNa2という感じだ。
3機種の基本スペックを表でざっくり比較
文章だけだとイメージしづらいと思うので、価格やキー数などの基本スペックを表にまとめておく。
細かい違いは後述するので、まずは全体像をつかんでもらえればと思う。
| keyball39 | roBa | moNa2 | |
|---|---|---|---|
| 価格(税込) | 白23,800円/黒24,800円 | 18,000〜21,000円ほど | フルセット40,000円/トラックボール・キーキャップなし30,000円 |
| キー数 | 39キー | 42キー | 42キー |
| スイッチ規格 | Cherry MX互換ホットスワップ(親指はKailh Chocに変更可) | 標準はCherry MXソケット中心/v3から全キーKailh Choc対応 | Choc v1/v2・lofree系のロープロファイル専用 |
| ワイヤレス対応 | 標準は有線(別売りSeaSideXで無線化可) | 標準対応(Bluetooth・ZMK) | 標準対応(完全ワイヤレス・ZMK) |
| トラックボールサイズ | 34mm | 34mm | 25mm |
HHKB使いが気になる軸で3機種を比べてみる
ここからが本題。
HHKBを長く使ってきた人が分割キーボードへの乗り換えを考えるとき、たぶん気になるであろうポイントを軸に、3機種を並べて見ていこうと思う。
HHKBを10年ほど使っているからこそ、乗り換えには慎重になっている。
ちゃんと事前調査して記事としてまとめてみる。

打鍵感はHHKBの静電容量無接点に敵うのか
正直に言うと、ここが一番ギャップを感じやすいポイントだと思う。
HHKB Professional HYBRID Type-S(36,850円・税込)は静電容量無接点方式で、押下圧45g、キーストローク3.8mm。
底打ちしても硬い感触が出にくく、スコスコ沈み込むあの独特の打鍵感がウリだ。
一方でkeyball39・roBaはCherry MX互換のメカニカルスイッチが基本になる。
スイッチを選べば静音・リニア・タクタイルなど好みの打鍵感に寄せられるし、静電容量無接点に近い滑らかさを出せるスイッチもあるけど、HHKBそのものと同じ打鍵感にはならない。
moNa2はロープロファイル専用スイッチなので、そもそもキーストロークが浅く、HHKBとはかなり違う打鍵体験になる。
「HHKBの打鍵感が絶対条件」という人には、正直どれもそのままの代替にはならないと思う。
むしろ「自分でスイッチを選んで好みの打鍵感を作れる」という自作キーボードならではの楽しさを求める人向けだ。
HHKB Studioという橋渡し的な選択肢
ちなみに、HHKBブランドの中にもメカニカル寄りの打鍵感を試せるモデルがある。
2023年10月発売のHHKB Studio(44,000円・税込)は、HHKBシリーズで初めてメカニカルスイッチを採用したモデルで、標準搭載のリニアスイッチは押下圧45g・キーストローク3.6mmのKailh製オリジナルスイッチだ。
静電容量無接点ではなくメカニカル方式のリニア軸なので、クリック感やタクタイル感のない、スッと沈み込む滑らかな押し心地になる。
これはkeyball39・roBa・moNa2で使われている一般的なメカニカルリニア軸ともかなり近い感触なので、いきなり自作キーボードに飛び込む前に、まずHHKB Studioでメカニカルの打鍵感を体験してみるのもアリな選択肢だと思う。
ホットスワップ対応で気に入らなければスイッチ交換もできるし、「HHKBブランドの安心感を残しつつメカニカルを試したい」という人には橋渡し的な一台になりそうだ。
ロープロファイル対応をチェック
ロープロファイル志向の人にはmoNa2が一番わかりやすい。
moNa2は最初からロープロファイル専用設計で、キーピッチも17mmと狭く、手首の負担を減らす方向に振り切っている。
roBaはv3から全キーをChocソケットに変更できるので、組み方次第でフルロープロ化が可能。
keyball39は親指キーだけロープロ化できる仕様で、他のキーは標準の高さのままになる。
ロープロを重視するならmoNa2、部分的に取り入れたいならkeyball39かroBa、という住み分けになりそうだ。
ワイヤレス対応の有無
ここは3機種で一番はっきり差が出るポイントだと思う。
keyball39は標準では有線(TRRSケーブル+USB)のみで、ワイヤレス化するにはSeaSideXという別売りの無線化キットを組み込む必要がある。
roBaとmoNa2は最初からワイヤレス前提で設計されていて、ZMKファームウェア+Bluetooth(BLE)で動く。
HHKB Professional HYBRIDシリーズはBluetoothとUSB Type-Cの両対応なので、無線で使いたいならHHKB・roBa・moNa2はどれも条件を満たすことになる。
keyball39を無線で使いたい場合は、追加のパーツ代と組み立ての手間がかかる点は覚えておいたほうがいいと思う。
耐久性はどうか
HHKBは静電容量無接点方式の耐久性の高さで定評があって、当サイトでもHHKB P2を6年使ったレビューを書いたことがあるくらい長持ちする印象だ。
一方でkeyball39・roBa・moNa2はどれも自作キーボードキットなので、耐久性はスイッチの選定やはんだ付けの質、ケースの作りに左右される部分が大きい。
ホットスワップソケットを使えばスイッチ交換自体は簡単だけど、基板やトラックボールセンサーが故障したときのメーカー保証のような手厚いサポートは期待しにくい。
roBaとmoNa2はバッテリー駆動なので、数年使うとバッテリーの劣化という別の耐久性の論点も出てくる。
「長期間ノーメンテで使い続けたい」という人にはHHKBのほうが安心感があるかもしれない。
将来性(コミュニティ・パーツ入手性・ファームウェア更新)
自作キーボード特有の観点として、コミュニティの活発さも見ておきたい。
keyball39は登場から数年経っていて、ビルドログや改造記事が大量に蓄積されている定番モデルだ。
Cherry MX互換スイッチは市場に出回っている種類が多く、パーツ入手性という意味では一番安心感がある。
roBaはGitHubでハードウェア設計・ファームウェアが公開されていて、v2からv3へとバージョンアップも続いている。
Keymap EditorとGitHub Actionsを使ったファームウェアビルドの仕組みも整っていて、有志による改良も活発な印象だ。
moNa2は比較的新しいモデルで、roBaほどの情報量はまだない。
ロープロ×完全ワイヤレスというニッチな条件を満たす貴重な選択肢ではあるけど、コミュニティの厚みという点ではこれからという段階だと思う。
採用基準で大きく考えたいのがバッテリーのリスク

理想を言えば、分割しているからこそワイヤレスでやってみたい。
有線だとPCに接続するケーブルとは別にキーボード同士を接続するケーブルも増えるため、目の前が散らかってしまう。
これは最大のデメリットだと思う。
じゃあワイヤレスで持ち運びも良いmoNa2が良いんじゃないの?っと思ったのだが、10年スパンで考えるとバッテリーのリスクは避けれれない。
ほぼ個人開発されている自作キーボードの世界では、バッテリーの取り扱いについては自己責任のように見受けられる。
つまり、バッテリーが膨張してきたら自分でメンテナンスや破棄をしなければならないし、バッテリーの膨張・発火などによる2次被害の可能性もある。
(有線でもありえるが、個人的にはバッテリー不調による故障のほうが確率としては高いと思っている。)
そもそも、無線で10年以上使えるワイヤレスキーボードが存在するのか?という視点でも現実的には有線のほうが良いのかもしれないと考えた。
だからこそ、あえて有線の分割キーボードを採用しても良いかもしれないと思い直している。
Keyball39は中古で2万円ちょっとで試せそう
有線と無線の話は置いておいて、分割キーボードを入門する弊害を考えてみたい。
まず、元祖であるKeyball39は、業界的に成熟されてきているのと、moNa2などのワイヤレスに注目が集まっているため、フリマサイトでもよく見かけるようになった。
価格としては、2万円〜6万円の間で推移されており、試すには良い時期だと思う。
さらにKeyballは、本来は自作キーボードに該当するためmoNa2のようにハンダ不要ではない。
そのため、0からスタートする場合は、ハンダゴテなどの準備から始まる。
総合的には、フリマサイトで購入することで製造準備コストやキースイッチなどの一連の問題を解決してくれる。
デメリットとしては、自作キーボードであるからこそ、ハンダ付けの技量によるため、接点不良などの不具合が起きる可能性が十分にある。
自分の場合は、趣味にリペアもあるため許容範囲だと考えているが、あまり知識がないのであれば、最初からmoNa2などを選ぶことをおすすめしたい。
分割キーボードはHHKBから買い替える価値がある?打点感・ロープロ重視派への結論
ここまで見てきた感じ、HHKBからの乗り換え先としてどれが向いているかは、その人が何を優先するかでけっこう変わってくる。
まずキーボードのカスタマイズ自体を楽しみたい、パーツ入手性や情報の多さを重視したいという人にはkeyball39が無難だと思う。 定番モデルなので困ったときに参考にできる情報が多く、有線接続に抵抗がなければ一番失敗しにくい選択肢だ。
ワイヤレスは譲れないけど、キースイッチはある程度標準の高さでいい、という人にはroBaが合っていると思う。
無線前提の設計かつオープンソースで開発が続いているので、将来性の面でも安心感がある。
手首への負担を減らしたい、ロープロファイルにこだわりたいという人にはmoNa2が一番刺さるはずだ。
ただし価格は3機種の中で一番高く、コミュニティの厚みもまだ発展途上という点は踏まえておいたほうがいい。
逆に、HHKB独特の打鍵感そのものが好きで、メンテナンスフリーで長く使いたいという人は、無理に分割キーボードへ乗り換えず、HHKBを使い続けるのも十分アリな選択だと個人的には思う。
自作キーボードは「打鍵感がHHKBを超える」というより、「HHKBにはない自由度を得る」という方向の乗り換えになる気がする。
また、HHKBを2つ用意することで実質的に分割キーボードと同じ効果を得ることができる。
机の上のスペースに余裕があるのであれば、まずはHHKBの2台体制も検討してみてはどうだろうか。
個人的には、入門ということもあり、まずはフリマサイトでKeyball39を購入してレビューしてみたいと思う。
引用元: Keyball39 – 遊舎工房、 Keyball39 – 白銀ラボ、 roBa【トラックボール付きワイヤレス自作キーボードキット】 – kuma – BOOTH、 roBa GitHubリポジトリ、 moNa2 – shakupan – BOOTH、 SeaSideX【Keyball無線化キット】 – Seaside Works – BOOTH、 HHKB Professional製品ラインナップ – PFU公式、 HHKB Professional HYBRID Type-S – PFUダイレクト、 HHKB Studio製品ページ – PFU公式、 「HHKB Studio」新登場 プレスリリース – PFU、 CHERRY MX SWITCHES AT A GLANCE – Cherry公式、 CHERRY MX SILENT RED – Cherry公式


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